オンプレミスとクラウドを効率よく使い分けて、業務効率を高めよう

オンプレミスとクラウドを効率よく使い分けて、業務効率を高めよう

「オンプレミスとクラウドは何が違うのか」「自社にはどちらが適しているのか」と迷っているIT担当者も多いのではないでしょうか。
オンプレミスとクラウドは、IT環境を用意・管理する主体や、コスト・導入期間・運用負担・セキュリティ・カスタマイズ性などに違いがあります。どちらか一方が優れているわけではなく、システムの用途や既存環境に合わせて使い分けることが重要です。
本記事では、オンプレミスとクラウドの違いやメリット・デメリット、クラウド移行のポイントなどを解説します。自社に適したIT環境を検討する際の参考にしてください。

オンプレとクラウドとは?それぞれの意味を解説

ここでは、オンプレミスとクラウドの意味をそれぞれ解説します。

オンプレミスとは

従来型のシステム構築手法であり、自社でサーバーやデータセンターなどのIT環境を用意して自ら運用・管理する形態です。

機器の選定・調達からシステムの構築・運用・保守まで、自社側で全般的に管理する点が特徴です。

自社の要件に合わせて環境を設計・管理しやすい一方で、設備の導入費用や継続的な運用に必要な人員・体制を確保する必要があります。

参考:デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」P.1用語集

クラウドとは

サーバー・ストレージ・ソフトウェアなどのITリソースを、ネットワーク経由でサービスとして利用する形態です。

自社で物理サーバーを購入・設置せずに、必要なときに必要な分だけITリソースを利用できる点が特徴です。

なお、クラウドにはIaaS・PaaS・SaaSなど複数の形態があり、事業者が管理する範囲はサービスによって異なります。

参考:デジタル庁「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」P.1用語集

オンプレミスとクラウドの主な違い

オンプレミスとクラウドの主な違いは、次の「コスト」「導入期間」「運用負担」「セキュリティ」の4点です。

  • コスト:オンプレミスは機器の購入・設置などで初期費用が発生しやすく、クラウドは初期投資を抑えやすい傾向がある
  • 導入期間:オンプレミスは機器の調達や環境構築に時間がかかりやすく、クラウドは物理機器の調達が不要なため、環境を準備しやすい
  • 運用負担:オンプレミスはハードウェアを含めて自社の管理範囲が広く、クラウドは物理設備などをクラウド事業者に任せられる
  • セキュリティ:オンプレミスは自社で広い範囲の対策が必要だが、クラウドでは事業者と利用企業で管理範囲を分担できる

オンプレミスかクラウドかを選ぶ際は、費用だけでなく自社が管理する範囲や必要な運用体制まで含めて比較しましょう。

コストや導入期間の違い

オンプレミスは、サーバーやネットワーク機器の購入・設置が必要なため、導入時にまとまった費用が発生しやすい傾向があります。一方、クラウドは自社で物理機器を調達せずにITリソースを利用できるため、初期投資を抑えやすく、環境の準備期間も短縮しやすい傾向です。

ただし、クラウドは利用量が増えると料金も増える場合があります。また、既存システムの移行や設計・テストが必要な場合は、プロジェクト全体の期間が想定より伸びる可能性もあります。

そのため、初期費用だけでなく、導入後の利用料金や移行にかかる費用・期間も含めて比較しましょう。

運用負担やセキュリティの違い

オンプレミスは、ハードウェアやOSなどを含め、自社で管理する範囲が広い点が特徴です。そのため、障害対応やアップデート、保守などを継続して行うための運用体制が必要になります。

一方、クラウドでは、物理設備などをクラウド事業者が管理するため、自社の運用負担を軽減できます。ただし、セキュリティ対策をすべて事業者に任せられるわけではありません。

クラウドでは「責任共有モデル」という考え方があり、クラウド事業者と利用企業がそれぞれの担当範囲に責任を持ちます。たとえば、アカウントやアクセス権限の管理、クラウド上の設定、利用者データの保護などは自社側で適切に対応する必要があります。

そのため、自社が担う管理範囲と必要なセキュリティ対策を確認したうえで、適した環境を選びましょう。

オンプレミスとクラウドのメリット・デメリット

オンプレミスとクラウドには、それぞれ異なるメリット・デメリットがあります。オンプレミスはカスタマイズ性や管理の自由度を確保しやすい一方、設備や運用の負担が大きくなりやすい点が特徴です。

クラウドは必要なITリソースを柔軟に利用しやすい反面、継続的なコスト管理や自社で対応すべきセキュリティ対策が必要です。

システムの用途や既存環境によって適した選択肢は異なるため、メリットだけでなくデメリットも踏まえて判断する必要があります。

オンプレミスのメリット・デメリット

メリット

自社の要件に合わせてハードウェアやネットワークなどを構成しやすい点が挙げられます。
システムやデータを自社管理の環境に置けるほか、工場設備と連携するシステムなど、通信遅延を抑えたい用途に適します。

デメリット

自社で設備を保有・管理するため、次のような負担があります。

  • サーバーなどの購入に初期費用がかかる
  • 設置場所や電源、冷却設備などを準備する必要がある
  • ハードウェアの保守・交換を自社側で行う
  • 容量を増やす際に機器の調達や設定が必要になる

オンプレミスは自由度を確保しやすい反面、設備の維持・運用・保守を担う人材や管理体制を整える必要があります。導入時は、カスタマイズ性だけでなく、継続的な運用負担も含めて判断しましょう。

クラウドのメリット・デメリット

メリット

物理サーバーを自社で購入せず、必要なタイミングでITリソースを利用しやすいことが挙げられます。利用状況に応じてサーバーの性能や容量を増減しやすく、大規模な設備投資を抑えながらシステムを立ち上げられます。

デメリット

利用にあたっては次の点に注意が必要です。

  • 利用量によって料金が変化するため、継続的なコスト管理が必要
  • ネットワークを利用する構成では、通信障害への備えが必要
  • サービスによって設定やカスタマイズの自由度が異なる
  • アカウントやアクセス権限など、利用企業側で管理すべき領域が残る

なお、クラウド事業者がインフラを管理していても、セキュリティ対策をすべて任せられるわけではありません。利用するサービスごとに、クラウド事業者と自社の責任範囲を確認し、必要な対策を行いましょう。

クラウドサービスの種類|SaaS・PaaS・IaaSの違い

クラウドサービスは、主にSaaS・PaaS・IaaSの3種類に分けられます。主な違いは、「クラウド事業者にどこまで管理を任せるか」です。それぞれ、利用できる範囲や自社で管理する範囲が異なります。

  • SaaS(Software as a Service)
    完成したソフトウェアをサービスとして利用する形態。電子メールやグループウェアなどが代表的で、利用企業が管理する範囲は比較的小さい
  • PaaS(Platform as a Service)
    アプリケーションの開発・実行に必要な環境を利用するサービス形態。サーバーやOSなどの基盤管理をクラウド事業者に任せられるため、アプリケーション開発に集中しやすい
  • IaaS(Infrastructure as a Service)
    仮想サーバーやストレージ、ネットワークなどのIT基盤を利用するサービス形態。OSやアプリケーションなどを自社で管理するケースが多く、3種類の中では比較的自由度を確保しやすい

システムの用途や自社で管理したい範囲に応じて、適したサービスを選んだり、組み合わせたりしましょう。

オンプレミスとクラウドはどちらを選ぶ?自社に合う使い分け

オンプレミスとクラウドのどちらを選ぶかは、会社全体で二者択一とするのではなく、システムごとの用途や要件に応じて判断しましょう。オンプレミスを検討しやすいのは、たとえば次のようなケースです。

  • 特殊な設備や既存システムと密接に連携している
  • ローカル環境での処理が必要
  • 通信遅延をできるだけ小さくしたい
  • データの保管場所に明確な要件がある
  • 既存の設備を引き続き活用したい

一方、クラウドは、利用量の変動が大きいシステムや新しいサービスを素早く立ち上げたい場合に検討しやすい選択肢です。ハードウェアの購入や保守にかかる負担を減らしたい場合にも適しています。

たとえば、以下のように整理すると、用途ごとの使い分けが分かりやすくなります。

  • 一般的な業務ソフト:SaaSを利用する
  • 利用量が変動するWebシステム:クラウドを活用する
  • 工場設備と直接連携するシステム:オンプレミスに残す

自社の要件を整理し、システムごとに適した環境を選ぶことが大切です。

オンプレミスとクラウドを組み合わせる「ハイブリッドクラウド」という選択肢

システムごとの要件に応じて、オンプレミスの環境とパブリッククラウドを組み合わせる「ハイブリッドクラウド」も選択肢の一つです。

たとえば、「既存の基幹システムや特定のデータはオンプレミスに残し、新しいWebサービスやデータ分析環境をクラウドで構築する」といった使い分けができます。

ハイブリッドクラウドのメリットは、主に以下の3つです。

  • クラウドに適したシステムから段階的に移行できる
  • 既存のIT設備への投資を活用できる
  • システムやデータの要件に応じて配置先を選べる

ただし、オンプレミスとクラウドの両方を管理するため、「ネットワーク」「ID・アクセス管理」「セキュリティ」などの設計が複雑になります。

そのため、「どのシステムやデータをオンプレに残し、どの領域をクラウドで運用するのか」を明確にすることが重要です。

オンプレミスからクラウドへ移行する際のポイント

オンプレミスからクラウドへ移行する際は、既存環境を把握し、移行の目的・対象・優先順位を整理したうえで計画を立てましょう。単純にサーバーを移すだけではなく、移行後の運用まで見据えて準備する必要があります。

まず、現在利用しているサーバー・アプリケーション・データベース・ネットワーク・外部サービスなどを確認します。あわせて、「それぞれのシステムがどのデータベースやサービスと連携しているか」も把握しておきましょう。

そのうえで、次のポイントを整理します。

  • クラウドへ移行する目的を明確にする
  • 移行対象と優先順位を決める
  • 導入後も含めた総コストを試算する
  • セキュリティ上の責任範囲を確認する
  • 移行前に性能や動作をテストする
  • 問題が起きた場合に元の環境へ戻す方法を準備する

なお、すべてのシステムを最初から一斉に移行する必要はありません。依存関係が少なく、業務への影響が比較的小さいシステムから検証し、そこで得た知見を次の移行に生かす方法もあります。

現状把握と優先順位付けを行い、検証しながら段階的に移行を進めることが重要です。

オンプレミスとクラウドの違いを理解して自社に合う環境を選ぼう

オンプレミスとクラウドは、IT環境の管理範囲・コスト・導入期間・運用負担・カスタマイズ性などに違いがあります。どちらか一方が優れているわけではなく、システムの用途や既存環境、自社の運用体制に合わせて選ぶことが重要です。

必要に応じて、オンプレミスとクラウドを組み合わせるハイブリッド構成も検討できます。また、オンプレミスからクラウドへ移行する場合は、目的・対象システム・コスト・セキュリティ・依存関係を事前に整理し、段階的に進めることが大切です。

それぞれの特徴を比較し、自社の要件に適したIT環境を選びましょう。