「社員にはAirで十分か。それとも、高くてもProを支給すべきか。」
企業のIT担当者にとってMacBookの機種選定は、コストと現場の要望で板挟みになる頭の痛い課題です。機種選定を誤ると重くて持ち運べないと不満が出たり、スペック不足で作業が止まったりするなど業務効率を下げるリスクがあります。
本記事では、MacBook AirとMacBook Proの違いについて解説した上で、職種・用途に合わせた選び方も紹介します。MacBook AirとProの違いを把握し、自社の業務環境に最適なモデルを選びましょう。
MacBook AirとProはビジネス利用ならどちらがいい?
結論、動画編集・3D処理・大規模開発で利用するならPro、それ以外の一般的なビジネス業務ならAirがおすすめです。以下では、MacBook AirとProにおけるそれぞれのおすすめなケース・職種を紹介します。
MacBook Airがおすすめなケース・職種
MacBook Airは、機動力とコストパフォーマンスを優先する職種におすすめです。特に、最新のMチップを搭載したモデルはエントリーモデルでありながら一昔前のハイエンド機並みの処理能力をもっています。
しかし、冷却ファンを搭載しないファンレス設計であるため、長時間の重い処理には向きません。MacBook Airがおすすめな職種と具体的な業務を簡単にまとめると、以下のとおりです。
- 営業・コンサルタント:外出先でのプレゼンテーションや移動中のメール対応
- 総務・人事・経理:スプレッドシートの操作やクラウド会計ソフトの利用
- Webライター・ディレクター:CMSへの記事入稿や画像のリサイズなどの軽作業
なお、MacBook Airの弱点は、外部ディスプレイ出力が1〜2枚である点です。トリプルディスプレイで株価やログを監視したいなどの要望がある場合は、Airを選ぶと業務に支障が出てしまう可能性があります。
MacBook Proがおすすめなケース・職種
MacBook Proは、クリエイティブ・技術職におすすめのツールです。MacBook Proの強みは単純な処理能力の高さだけではなく、冷却ファンによる安定性がある点です。
MacBook Airで重い作業を行うと熱暴走を防ぐために処理速度を落とす現象が発生しますが、MacBook Proなら常に安定したパフォーマンスを維持できます。MacBook Proがおすすめな具体的な職種と業務は、以下のとおりです。
- エンジニア・プログラマー:Dockerなどのコンテナ技術や仮想環境の構築、長時間を要するコードのビルド実行
- 動画編集者・YouTuber:Premiere ProやDaVinci Resolveでの編集、4K動画の書き出し
- Webデザイナー・DTPオペレーター:数百枚のレイヤーを扱うPhotoshop操作、Illustratorでのデザイン制作
なお、クリエイティブ用途でMacBook Proを導入するなら、最低でも16GB以上のメモリ容量を選択してください。メモリ容量を抑えすぎると高価なCPU性能を生かせず、高負荷な作業では動作が遅くなる恐れがあります。
MacBook AirとProの違い
MacBook AirとProの違いは、主に以下の5点です。
- 処理性能:マルチタスクの快適性
- 携帯性:外回りやハイブリッドワークへの適性
- ディスプレイ品質:長時間作業の疲労度と色の再現性
- 拡張性(ポート数):外部モニターや周辺機器の接続
- バッテリー駆動時間:電源確保が難しい環境での対応力
これらは単なるカタログ上の数値差ではなく、実際の業務効率や社員のストレスに直結する要素です。「コストを抑えるべきか」「生産性を優先すべきか」を、現場の働き方と照らし合わせて判断しましょう。
処理性能:マルチタスクの快適性
MacBook AirとProの大きな違いは処理性能で、冷却ファンの有無が長時間作業時のパフォーマンスに影響します。MacBook AirとProの処理性能に関する具体的な違いをまとめると、以下のとおりです。
- MacBook Air(ファンなし):動画の書き出しや大量のデータ処理を長く続けると、熱暴走を防ぐために性能を落とすサーマルスロットリングが発生
- MacBook Pro(ファンあり):冷却ファンが熱を排出するため、数時間の高負荷作業でも処理速度が落ちない
なお、Web会議をしながら複数のブラウザを開き、Officeソフトを使用する程度であれば、MacBook Airで十分です。Airに搭載されるMチップの性能は非常に高く、一般的なビジネス用途で遅いと感じるケースはほぼありません。
一方、Dockerなどの仮想環境を常時使用するエンジニアや4K動画を編集するクリエイターの場合は、冷却ファンがあるMacBook Proが必須です。
携帯性:外回りやハイブリッドワークへの適性
MacBook AirとProの違いは携帯性にもあり、それぞれの特徴を具体的にまとめると以下のとおりです。
- 【MacBook Air】
- 約1.24キログラムであり、片手で軽々とつかめる薄さ
- 一般的なA4対応のビジネスバッグやトートバッグにすんなり収まる
- 営業職やフリーアドレスで頻繁に席を移動する社員に最適
- 【MacBook Pro】
- 約1.55キログラム〜で、ずっしりとした重みがあり、厚みも増す
- リュックサックでないと長時間移動時の肩への負担が大きい
毎日PCを持ち運ぶ職種であれば、携帯性の面でMacBook Airのほうが扱いやすいでしょう。数値上の差はわずか300グラム〜400グラム程度ですが、鞄に入れた際に実感する重量は大きく異なります。
ディスプレイ品質:長時間作業の疲労度と色の再現性
MacBook AirとProの違いは、ディスプレイ品質にもあります。両モデルとも高精細なRetinaディスプレイを搭載していますが、1秒間に画面を書き換える回数であるリフレッシュレートに差があります。MacBook AirとProにおける、ディスプレイ品質の具体的な違いをまとめると以下のとおりです。
- 【MacBook Air(60Hz)】
- 一般的なモニターと同じ性能
- 比較しなければ十分に綺麗だが、MacBook Proの滑らかさに慣れた後にMacBook Airを使うとスクロールのカクつきを感じやすい
- 【MacBook Pro(120Hz ProMotion)】
- 画面が1秒間に120回書き換わるため、スクロール時のなめらかさはMacBook Airより優れている
- 大量のコードを読むエンジニアや長文をチェックする編集者などでも目が疲れにくい
- 最大輝度も高く、日当たりの良い窓際での作業でも画面がくっきり見える
眼精疲労の軽減を生産性向上の一環として考えるなら、MacBook Proに軍配が上がります。なお、Webデザイナーや広報担当で印刷物の色校正や正確な色味の確認が必要な場合はProのXDRディスプレイがおすすめです。MacBook AirでもsRGBはカバーしていますが、厳密な色管理にはMacBook Proが適しています。
拡張性(ポート数):外部ディスプレイや周辺機器の接続
ポート数などの拡張性においても、MacBook AirとProでは以下のように大きな違いがあります。
- 【MacBook Air】
- 左側にUSB-Cが2つあるのみ
- 充電しながら外部ディスプレイにつなぐとポートが埋まるため、USBメモリなどの周辺機器を接続できなくなることがある
- HDMI端子がないため、客先でプロジェクターに投影する際に変換ハブを忘れると作業ができない
- 【MacBook Pro】
- HDMIポートを標準搭載しており、テレビや外部ディスプレイに直挿しが可能
- SDカードスロットが備わっているため、カメラからデータを即座に取り込める
- USB-Cポートが左右両方の側面に備わっており、ケーブルの取り回しがしやすい
もし、変換アダプターを持ち歩くストレスや忘れた際のトラブルを無くしたいならMacBook Proがおすすめです。また、外部ディスプレイを接続して表示できる枚数にも以下のような違いがあります。
- MacBook Air:外部ディスプレイは1台〜2台まで
- MacBook Pro:外部ディスプレイで2台〜4台の出力が可能
そのため、3台以上のマルチディスプレイ環境で生産性を上げたい場合はMacBook Proを選びましょう。
バッテリー駆動時間:電源確保が難しい環境での対応力
バッテリー駆動時間にも、MacBook AirとProで違いがあります。カタログスペック上はどちらも優秀ですが、実務におけるバッテリーの減りにくさは使い方によってはMacBook Proがやや有利です。
参考にAppleの公式サイトには、AppleTVアプリでの動画再生時におけるバッテリー駆動時間が公表されています。
- MacBook Air:最大18時間
- MacBook Pro(14インチ M3):最大22時間
どちらも、Web閲覧やドキュメント作成程度なら朝から夕方まで充電器なしで十分に使用できます。ただし、MacBook Proはバッテリー容量自体が大きいため、高負荷な作業を行っても電池の減りが緩やかです。
一方、MacBook AirもProもMagSafe 3の充電ポートを搭載しており、30分で最大50%まで回復する急速充電に対応しています。そのため「電源のないカフェで数時間作業する」などといった使用方法であれば、MacBook AirとProのどちらを選んでも問題ありません。
しかし、「丸一日外出して、テザリングもしながら作業する」など、バッテリー消費が激しい場合は、余裕を持って使用できるMacBook Proのほうが安心といえるでしょう。
参考:MacBook Air 13-inch and MacBook Air 15-inch|Apple
参考:MacBook Pro (14-inch, M3, Nov 2023) - Tech Specs - |Apple
【職種別】企業が選定すべきMacBookの推奨モデル
本章では、企業が選定すべきMacBookの推奨モデルを以下の職種ごとに紹介します。
- 営業・企画・バックオフィス
- エンジニア・Webデザイナー
- 動画編集者・データサイエンティスト
業務の特性によって、PCに求められる速さと軽さの優先順位は異なります。オーバースペックによるコストの無駄を省き、現場のパフォーマンスを最大化するための選定基準を具体的に解説します。
営業・企画・バックオフィス
営業・企画・バックオフィスにおいては、MacBook Airがおすすめです。営業やバックオフィス業務では、移動のしやすさとWeb会議やマルチタスクをこなせる性能が求められます。
ハイスペックなMacBook Proを支給する必要性は低く、差額をモニターやキーボードなどの周辺機器に回すほうが満足度は上がります。具体的に、営業・企画・バックオフィスにおすすめするMacBook Airのスペック構成は以下のとおりです。
- モデル:MacBook Air 13インチ
- チップ:M4
- メモリ:16GB
- ストレージ:256GB
なお、「事務作業なら一番安価な8GBモデルでも十分」となりがちですが、メモリ容量を抑えた構成は業務に支障が出やすいため注意が必要です。
現代のビジネス環境ではブラウザでタブを複数個開きながら、SlackやZoomなどのアプリを同時に立ち上げるのが一般的です。
このような使用用途では8GBメモリだとすぐに容量不足になり、動作遅延につながります。従業員のストレスを減らし、PCの寿命を延ばすためにも16GB以上のメモリは確保してください。
エンジニア・Webデザイナー
エンジニア・Webデザイナーの場合は、開発環境やデザインツールを快適に動かすためにMacBook Proを選定しましょう。エンジニア・Webデザイナーで重要なスペックは、外部モニターの出力枚数と冷却ファンによる安定動作です。
MacBook Airを選ぶと外部ディスプレイの接続数や帯域に制限がかかり、複数の高解像度ディスプレイを駆使した作業環境を構築できません。具体的に、エンジニア・WebデザイナーにおすすめするMacBook Proのスペック構成は以下のとおりです。
- モデル:MacBook Pro 14インチ
- チップ:M4 ProまたはM4 Max
- メモリ:24GB または 48GB以上
- ストレージ:512GB以上
なお、MacBook Proには安価な標準M4チップ搭載モデルがありますが、プロのエンジニアやデザイナーにはあまり適していません。標準M4チップは外部ディスプレイ出力が本体を閉じた状態で最大2枚までに制限されています。また、より高速なThunderbolt 5規格もM4 Pro以上からの対応となるため、将来的な拡張性に不安が残ります。
動画編集者・データサイエンティスト
動画編集者・データサイエンティストの場合は、書き出しや解析時間を短縮するためにMacBook Proを選びましょう。4K・8K動画のレンダリングやローカル環境でのLLM構築など、GPU性能をフルに使う業務においてMacBook Airでは処理性能的に不向きです。具体的に、動画編集者・データサイエンティストにおすすめするMacBook Proのスペック構成は以下のとおりです。
- モデル:MacBook Pro 14インチまたは16インチ
- チップ:M4 Max
- メモリ:36GB〜
- ストレージ:1TB以上
これらの構成にするとMacBook Pro1台当たり50万円〜と高額ですが、費用以上に生産性の向上に大きく貢献します。たとえば、動画の書き出し時間が1本当たり15分短縮できれば、月に20本制作する現場だと毎月5時間の工数削減が可能です。なお、長時間フルパワーで稼働させるなら排熱効率に優れた16インチのほうがサーマルスロットリングが起きにくくパフォーマンスを維持できます。
MacBook AirとProの違いを理解して現場に最適な1台を導入しよう
企業のMacBook導入において、AirとProの選択は単なる機種選びではなくコストと生産性を左右する重要な経営判断です。結論として、営業やバックオフィス業務には軽量かつ十分な処理能力をもつMacBook Airが最適です。一方で、エンジニアやクリエイターには冷却ファンによる安定動作と多画面出力が可能なMacBook Proが不可欠となります。
進化の早いデバイスだからこそ、全社員に一律のモデルを支給するのではなく業務内容に合わせて機種を選定する必要があります。現場のニーズを見極めてコストとスペックのバランスを最適化し、企業の成長スピードを加速させましょう。

