「マルチタスクをこなしているはずなのに、なぜか仕事が終わらない……」などの焦りを感じていませんか? もし、集中力が続かず仕事が中途半端になったり、以前はしなかったようなミスが増えたりしているなら、能力不足が原因ではありません。多くの場合、非効率なマルチタスクのやり方が生産性を下げているためです。
本記事ではマルチタスクの効率的なやり方について、メリット・デメリットやシングルタスクとの使い分けもあわせて紹介します。本記事を読むことで、正しいマルチタスクのやり方を理解し、スムーズに業務を進められるようになります。マルチタスクをスムーズにこなし、業務のパフォーマンスを向上させましょう。
マルチタスクとは

マルチタスクとは複数の作業を同時に、あるいはごく短い間隔で切り替えながら進める手法です。ビジネスの現場におけるマルチタスクの例として、以下が挙げられます。
- オンライン会議に参加しながら、メールやチャットの確認・返信をする
- 資料を作成している最中に、かかってきた電話に対応する
- 複数のプロジェクトや案件を、同時並行で管理・進行する
- プレゼンテーションを聞きながら、パソコンで議事録を作成する
- 複数の顧客とチャットサポートで同時にやり取りする
複数の業務を同時にこなせるため、短時間でより多くのタスクを完了させられる点が大きなメリットです。しかし、複数の業務を同時に実行するため脳にかかる負荷も大きく、集中力が下がって生産性が低下する恐れもあります。
シングルタスクとの違い
マルチタスクと対になる考え方がシングルタスクで、1つの作業に集中して取り組み、完了してから次の作業に移る手法です。マルチタスクとの違いは単に作業の数だけではなく、脳の使い方にもあります。
人間の脳は、基本的に一度に複数の情報処理を同時に行えません。そのため、マルチタスクを行っているときの脳内は、各タスクに対する意識を高速で切り替えている状態にあります。
マルチタスクは多くの作業をこなせるため生産性が高いように見えますが、1つの業務に集中しきれず、ミスを起こすリスクを伴います。
一方、シングルタスクは1つの作業に脳を集中させるため、ミスなく確実に完了させやすい点がメリットです。結果として業務の質が高まり、精神的な負担も少ないためトータルで見るとマルチタスクより早く作業が終わるケースもあります。
マルチタスクのメリット

マルチタスクのメリットは、主に以下の3点が挙げられます。
- 急な依頼やトラブルにも対応しやすい
- 多角的な視点で業務を見られるようになる
- 複数の業務を回すタフさが身につく
上記のメリットにあわせて、適切な場面でマルチタスクを実施しましょう。
急な依頼やトラブルにも対応しやすい
急な依頼やトラブルにも対応しやすい点が、マルチタスクのメリットです。ビジネスの現場では、クライアントからの急な仕様変更や予期せぬトラブルはつきものです。上記のケースでは、マルチタスクに慣れていると思考を素早く切り替えて柔軟に対応できます。
たとえば、1つのタスクに没頭している最中に緊急の割り込みが入ると、大きなストレスを感じ、対応が後手に回ってしまいます。しかし、日頃から複数のタスクにアンテナを張って状況を把握する習慣があれば、優先順位を冷静に判断して対処が可能です。
多角的な視点で業務を見られるようになる
複数の異なるタスクに同時に触れ、自然とプロジェクト全体を俯瞰する多角的な視点が養われる点もマルチタスクのメリットです。たとえば、A案件のデザイン進捗を気にかけながら、B案件のシステム要件についてエンジニアと議論する状況があるとしましょう。
マルチタスクを普段から行っていれば、両タスクの関連性や依存関係が見えやすくなります。そのため、「A案件で採用したこのUIは、B案件にも応用できるかもしれない」など新しいアイデアが生まれるケースも珍しくありません。
複数の業務を回すタフさが身につく
複数の業務を回すタフさが身につく点も、マルチタスクのメリットです。多くのタスクを時間的制約がある中で管理・遂行していく経験は、精神的な強さを鍛え上げます。
たとえば、キャリアの初期段階では2つの案件を同時に担当するだけで手いっぱいだったとしましょう。
マルチタスクで経験を重ねれば、3〜4つとより多くの複雑な業務を冷静にさばけるようになっています。精神的なタフさは将来さらに大きなプロジェクトを任されたり、リーダーとしてチームを率いたりする上で自信の土台となります。
マルチタスクに潜むデメリット

マルチタスクにメリットもある一方で、以下のデメリットも存在します。
- 生産性が低下しやすい
- ケアレスミスや判断ミスが起こりやすくなる
- ストレスが増大して健康を害しやすい
上記のデメリットに対しては、事前に対策を講じておきましょう。
生産性が低下しやすい
マルチタスクを頻繁に行うと、生産性を低下させやすい点がデメリットです。マルチタスクで生産性が低下する要因は、複数のタスクを実行する際に伴う脳への負荷にあります。アメリカ心理学会(APA)による研究報告では、脳内での頻繁なタスクの切り替えによって生産性が最大で40%も低下する可能性があるとされています。
複数の作業を同時に進めている状態は、脳が常にエンジンをかけ直しているような状況です。マルチタスクのやり方によっては集中力を浪費するだけで、結果的にどのタスクも完了まで時間がかかるリスクがあります。
参考:Multitasking: Switching costs|American Psychological Association
ケアレスミスや判断ミスが起こりやすくなる
ケアレスミスや判断ミスが起こりやすくなる点も、マルチタスクのデメリットです。私たちの脳が一度に扱える情報量には限界があります。マルチタスクによって複数の情報を常に意識していると脳が常に圧迫され、1つの物事に対する注意力が散漫になってしまいます。
結果として、「クライアントへのメールの宛先を間違える」「重要なファイルを添付し忘れる」といったケアレスミスが頻発しやすいです。特に注意すべきは、重要な意思決定の場面です。複数の情報に気を取られるあまり、プロジェクトの方向性を左右する場面で考慮すべきポイントを見落とすリスクが高まります。
ストレスが増大して健康を害しやすい
ストレスが増大して健康を害しやすい点も、マルチタスクのデメリットです。常にタスクに追われる切迫感は私たちの心身に大きなストレスを与えます。
結果として、夜ベッドに入っても仕事のことが頭から離れず、質の高い睡眠が妨げられるなどの悪循環に陥りがちです。上記のような状態が慢性化すると仕事への意欲を失う燃え尽き症候群につながり、心身の健康を害するリスクも高まります。
マルチタスクがうまくいかない原因

マルチタスクがうまくいかない原因として、主に以下の3つが考えられます。
- 全体像を把握せず行き当たりばったりで始めている
- マルチタスクでかかる作業負荷を無視している
- すべてのタスクを100%でやろうとしている
マルチタスクを実施する際は、上記原因への対策を講じましょう。
全体像を把握せず行き当たりばったりで始めている
全体像を把握せず行き当たりばったりで作業を始めるとうまくいきません。
たとえば、朝PCを立ち上げて、目に飛び込んできたメールやチャットの通知に反応して作業を始めるといった行動が典型例です。
このように作業を進めると、次々とやってくる急な依頼やトラブルに振り回されてしまいます。結果として、緊急ではあるものの重要ではないタスクに時間を奪われ、本当に注力すべき仕事が後回しになってしまいます。
効果的にマルチタスクを進めるには、作業を始める前に業務でのゴールを定めて優先順位を決める必要があります。
マルチタスクでかかる作業負荷を無視している
マルチタスクでかかる作業負荷を無視しているケースでも、業務はスムーズに進みません。タスクを切り替えるたびに集中力は一度リセットされるため、再度集中力を高めようとすると多くの時間とエネルギーを消費します。
上記の負荷を考慮せずに作業を進めると、集中力が低下し続けて業務スピードも上がりません。そのため、「いつも時間に追われている」という感覚から抜け出せず、精神的なストレスから健康を害する可能性も出てきます。
すべてのタスクを100%でやろうとしている
すべてのタスクを100%でやろうとしている場合も、マルチタスクはうまくいきません。たとえば、クライアントに提出する最重要の提案書と社内共有用の簡単な議事録では、求められる完成度が異なります。提案書は高い完成度を目指すべきですが、議事録は要点が正確に伝わる程度の完成度で十分です。
すべての仕事に同じ熱量で100%のクオリティを目指すと、時間とエネルギーがいくらあっても足りません。タスクの重要性や目的に応じて投入する力の配分を変える発想が、賢いマルチタスクのやり方を実践する上で重要です。
マルチタスクをうまくこなす7つのやり方
マルチタスクをうまくこなすやり方として、以下の7つを紹介します。
- タスクを見える化して全体像を把握する
- タスクの優先順位付けを行う
- タスクごとの作業時間を決める
- 似た種類の作業は時間を決めてまとめて処理する
- 休憩を適宜はさんで脳をリフレッシュさせる
- 情報を一元化的に管理して探す時間をゼロにする
- タスク管理ツールを活用する
マルチタスクがうまくいかない人は、上記のやり方を業務に取り入れてください。
タスクを見える化して全体像を把握する
効果的なマルチタスクのためには、頭の中にあるタスクをすべて可視化して客観的に把握する必要があります。A案件の企画書作成、B案件のクライアント定例、メンバーとの1on1、経費精算など思いつく限りのタスクをすべて書き出してください。
タスクをすべて書き出せば、頭の中だけで管理する負荷から解放され、「何か忘れているかもしれない」という漠然とした不安を取り除けます。結果として目の前のタスクに集中しやすくなり、マルチタスクもスムーズに進みます。
タスクの優先順位付けを行う
次に、限られた時間と集中力を重要な仕事に注ぐために、タスクの優先順位を決めましょう。優先順位付けで役立つのが、「アイゼンハワー・マトリクス」と呼ばれるフレームワークです。
これは重要度と緊急度の軸でタスクを以下の4つに分類します。
- 重要かつ緊急なタスク
- 重要だが緊急ではないタスク
- 緊急だが重要ではないタスク
- 重要でも緊急でもないタスク
タスクを重要性と緊急性の観点から整理して優先順位を設ければ、期日に間に合わないなどのリスクを未然に防げます。
タスクごとの作業時間を決める
タスクごとの作業時間を決めて行う「タイムボクシング」という手法は、マルチタスクを効率的に進める上で非常に有効です。
具体的には、「9:30〜10:30はA案件の企画書作成とメールの返信」といったタスクをあらかじめカレンダーに登録します。
タスクごとの作業時間を決めることで「その時間はそのタスクだけに集中する」という意識を強制的に作り出せるのがメリットです。結果として、マルチタスクであっても目の前のタスクに集中しやすくなり、生産性の向上につながります。
似た種類の作業は時間を決めてまとめて処理する
似た種類の作業は時間を決めてまとめて処理しましょう。作業をまとめて処理すれば、タスクの切り替えに伴う脳の負荷を最小限に抑えられるためです。
たとえば、メールの返信やチャットの確認、電話の折り返しなどのコミュニケーション系の作業は1日に数回、時間を区切ってまとめて処理します。同様に、資料作成やデータ分析といった思考を要する作業も、連続して行うと集中状態を維持しやすくなります。
休憩を適宜はさんで脳をリフレッシュさせる
マルチタスクで高い生産性を維持するためには、休憩も仕事の一部と捉えて意図的にスケジュールに組み込みましょう。
たとえば、「25分作業+5分休憩」を1サイクルとするポモドーロ・テクニックなどを活用し、強制的に脳を休ませる時間を作ります。
休憩時間はPCの画面から離れて少し歩いたり、窓の外を眺めたりと意識的に仕事から離れることがポイントです。休息を適宜はさんでタスクに取り組めば、集中力を維持しやすくなります。
情報を一元化的に管理して探す時間をゼロにする
情報を一元化的に管理して探す時間を短縮することも、マルチタスクを効率的に実施するポイントです。「あのクライアントとの議事録、どこに保存したかな……」などの探し物の時間は思考を中断させ、生産性を大きく低下させます。
具体的には、以下のように業務に必要な情報・資料は1箇所に集約して管理しましょう。
- プロジェクトごとに専用のクラウドフォルダを作成し、関連資料をすべて集約する
- ノートアプリで案件ごとのページを作り、必要な情報へのリンクをすべて貼っておく
タスク管理ツールを活用する
タスク管理ツールを使ってやるべきことを可視化すれば、頭の中はすっきりと整理されます。タスクの全体像を客観的に把握できるため、「どの作業を先に終わらせるべきか」など的確な判断が可能です。
タスク管理ツールでは、登録したタスクを「未着手」「作業中」「完了」などステータスを切り替えられます。また、繰り返し設定や優先度付け機能が備わっているツールも多く、タスク管理の手間も省けます。
シングルタスクと使い分けて生産性を最大化する方法
マルチタスクとシングルタスクと使い分ける考え方として、以下の2つの基準を紹介します。
- 高い集中力が必要となる創造的なタスクはシングルタスクで行う
- 思考負荷の低い作業的なタスクはマルチタスクで処理する
業務内容に応じて、マルチタスクとシングルタスクを使い分けるのも業務効率化に有効です。
高い集中力が必要となる創造的なタスクはシングルタスクで行う
プロジェクトの価値を大きく左右するような創造性や深い思考が求められるタスクは、シングルタスクで実行しましょう。こうしたタスクは脳がさまざまな情報を整理し、新しいアイデアを結び付けるための深い集中状態を求められるからです。マルチタスクでは深い集中状態が続きにくいため、質の高いアウトプットを出しにくい点が課題となります。
たとえば、プロジェクトマネージャーの場合、以下のようなタスクはシングルタスクで行いましょう。
- プロジェクトの根幹となる企画書や提案書の作成
- 複雑な問題の原因を分析し、解決策を立案する作業
- チームメンバーの能力を評価し、具体的なフィードバックを準備する時間
重要なタスクに取り組む際は、1〜2時間の時間帯をカレンダーに確保しておきましょう。タスクの間は「チャットの通知をオフにする」「電話に出ない」などを徹底し、誰にも邪魔されない環境を意図的に作り出すのが重要です。
思考負荷の低い作業的なタスクはマルチタスクで処理する
深い思考を必要としない定型的・作業的なタスクは、マルチタスクで効率的に処理しましょう。これらのタスクは個別に集中して取り組むよりも、似たものをまとめて一気に片付けてしまうほうが時間的効率は上がります。具体的には、以下のようなものが思考負荷の低い作業的なタスクに該当します。
- 複数の案件に関する経費精算や稟議申請などの事務処理
- 溜まった社内メールの確認と返信
- 日報や週報の作成、社内ツールへの進捗入力
上記のような定型業務を効率的にさばけば、創造的な思考を必要とするタスクに取り組むための時間と集中力も生み出しやすいです。
マルチタスクを活用して生産性の向上を図ろう
マルチタスクでは、タスクの見える化と優先順位付けを行い、計画性を持って取り組むことが、非効率な働き方から脱却する鍵となります。タイムボクシングなどの手法で脳の負担を減らし、創造的な仕事はシングルタスクで行うなど戦略的な使い分けも重要です。本記事で紹介した手法を実践すれば、タスクに振り回されて時間を消費しなくて済み、より価値の高い仕事に集中できます。
しかし、せっかく優れたタスク管理術を身に付けても業務で使うPCの性能が低ければ、効果は半減してしまいます。マルチタスクでの作業を止めないためには、仕事術だけでなくストレスなく動作する高性能なPCが不可欠です。上記のケースで、ぜひ検討したいのがテクノレントの法人向けPCレンタルサービスです。
テクノレントでは幅広い種類のPCを揃えており、必要なスペックのPCを気軽にレンタルできる上、購入に比べて初期投資を大幅に抑えられます。面倒な初期設定の必要もなく、届いた当日からPCですぐに業務を開始できます。
業務効率化を図るために高性能なPCに変えたいけれども、なるべくコストを抑えたい場合は、テクノレントのPCレンタルサービスをぜひご検討ください。