Microsoftが提供するWindows Autopilotは、企業で使うパソコンをクラウド経由で効率よくセットアップできるサービスです。キッティング作業(OSやソフトウェアなどの各種設定を行い、デバイスをすぐに利用できる状態にすること)にかかる負担を軽減できることで注目を集めています。
本記事では、Windows Autopilotの特徴や導入するメリット、利用する際の要件などを解説します。Windows Autopilotの導入をご検討中の方は、ぜひ参考にしてください。
Windows Autopilotとは
Windows Autopilotとは、業務に必要なパソコンなどのデバイスをクラウド経由でセットアップできるサービスです。パソコンを受け取ったユーザーが起動してIDやパスワードを入力するだけで、OSや設定、プロファイルが自動的に反映されます。
通常、手動でセットアップする場合、ユーザーはさまざまな設定を選択する必要があります。しかし、Windows Autopilotはログオンするだけでクラウドから自動的にセットアップ内容が適用されます。
Windows Autopilotを利用することで、従来のようにIT担当者が手動でセットアップする必要がなくなるため、IT担当者の負担や作業時間を削減することができます。
Microsoft Entra IDとMicrosoft Intuneについて
Windows Autopilotを利用するには、「Microsoft Entra ID」と「Microsoft Intune」が必要です。
Microsoft Entra IDとは
Microsoft Entra IDとは、クラウドベースのID管理サービスで、さまざまなサービスの認証・認可を行うことができます。以前はAzure AD(Microsoft Azure Active Directory)という名称でしたが、2023年10月1日よりMicrosoft Entra IDに名称変更されました。Windows Autopilotを利用するときはMicrosoft Entra IDと連携してユーザー認証やデバイス登録を行います。
Microsoft Intuneとは
Microsoft Intuneとは、クラウド型デバイス管理サービスで、モバイルデバイス管理(MDM)とモバイルアプリケーション管理(MAM)の2つの機能を備えています。Microsoft Intuneを使用することで、従業員のデバイスを管理し、データの保護を強化できます。Windows Autopilotでは、Microsoft Intuneと連携することで、デバイスのリモート管理やセキュリティ設定、アプリケーションの配布などが可能になります。
従来のデバイス管理との違い
従来のデバイス管理の場合、パソコンを導入した際はIT担当者がキッティングを行う必要がありました。
導入台数が少ない場合は、IT担当者が一台ずつ手作業で行いますが、導入台数が多い場合は、マスターイメージを作成して複数台のパソコンにコピーする「クローニング」という方法を使います。一度に複数台のキッティングができる反面、構成変更や機能更新プログラムを適用するたびに新しいイメージを作成する必要があるため、手間がかかっていました。
一方、Microsoft Autopilotでは、デバイスの各種設定をクラウド上で一元管理してセットアップを自動化するため、構成変更や機能更新プログラムを適用する際にも迅速に対応できるという利点があります。IT担当者が事前にデバイス情報やユーザー情報などを登録しておくことで、従業員はパソコンを起動してMicrosoft Entra IDで認証を行うだけですぐに利用できるようになります。
Windows Autopilotを導入するメリット
Windows Autopilotを導入すると、さまざまなメリットがあります。主なメリットを4つご紹介します。
1 情報システム部の負担を軽減できる
繰り返しになりますが、従来のキッティングは、一台ずつ作業するか、マスターイメージを作成して複数台にコピーするクローニングが必要でした。イメージ展開は構成変更や機能更新プログラムを適用するたびに作り直す手間がかかるうえに、きちんと動作するか検証も必要です。膨大な作業工数がかかるため、情報システム部の大きな負担となっていました。
Windows Autopilotを利用すれば、管理者が管理画面を操作するだけで設定が完了します。検証も基本的に一台のみで問題ないため、従来に比べて工程を大幅に削減できます。また、セットアップはユーザー側で簡単に行えるため、IT担当者の負担も軽減できます。
2 リモート操作できる
Windows Autopilotはクラウドを経由して設定するため、リモート操作が可能です。IT担当者はキッティングのためにわざわざ出社する必要がありません。また、パソコンに不具合が発生した際も、リモート操作で対応できるので、テレワークなどの働き方にも適しています。
3 設定時のミスを防げる
Windows Autopilotは、IDやパスワードを入力するだけでセットアップが自動的に始まります。自身で初期設定したり、アプリケーションのインストールを行ったりする必要はありません。手動でセットアップする場合に比べて設定時のミスを防げることもメリットの一つです。
4 離職者のパソコンを再利用しやすい
Windows Autopilotは既存のパソコンにも適用できるため、離職者のパソコンを再利用しやすいこともメリットの一つです。Windows Autopilotには、Microsoft Intuneを使って個人用ファイルやアプリケーションの削除や設定をリセットできる機能が備わっています。離職者から返却されたパソコンを初期化し、他の従業員が使えるように再セットアップすることが容易に行えます。万が一、パソコンを紛失した場合も、リモート操作でデータ消去を実施できるので安心です。
Windows Autopilotの要件
Windows Autopilotの要件には、ソフトウェア要件、ライセンス要件などがあります。利用するには要件を満たす必要があります。
ソフトウェア要件
Windows Autopilotは、Windows 10から導入されました。それ以前のパソコンでは使用できません。また、Windows Autopilotはビジネス用のため、個人や一般家庭向けのHomeエディションには対応していません。
Windows Autopilotのソフトウェア要件は、次の通りです。
- Windows 11 Pro
- Windows 11 Pro Education
- Windows 11 Pro for Workstations
- Windows 11 Enterprise
- Windows 11 Education
- Windows 10 Pro
- Windows 10 Pro Education
- Windows 10 Pro for Workstations
- Windows 10 Enterprise
- Windows 10 Education
- Windows Holographic バージョン2004以降
ライセンス要件
Windows Autopilotでは、Microsoft Entra ID(旧:Azure AD)やMicrosoft Intuneのライセンスを含んだ以下のサブスクリプション契約が必要です。
- Microsoft 365 Business Premiumサブスクリプション
- Microsoft 365 F1または F3 サブスクリプション
- Microsoft 365 Academic A1、A3、または A5 サブスクリプション
- Microsoft 365 Enterprise E3 または E5 サブスクリプション
- Enterprise Mobility + Security E3または E5 サブスクリプション
- Intune for Education サブスクリプション
- Microsoft Entra ID P1またはP2とMicrosoft Intune サブスクリプション(または代替のMDMサービス)
Windows Autopilotの注意点
Windows Autopilotを利用する際には、次のような点に注意しましょう。
廃棄する際はデバイスIDを削除する
Windows AutopilotにデバイスIDを登録しているパソコンは、廃棄や転用する際にデバイスIDの削除が必要です。削除できていない中古パソコンにはWindows Autopilotの管理画面が表示されてしまいます。万が一、外部で再利用されると情報漏えいのリスクがあります。廃棄する際は、必ずデバイスIDを削除しておきましょう。
導入には知識が必要
Windows Autopilotは、IT担当者の負担を軽減できるメリットがありますが、クラウド経由で設定を行うため、導入には専門的な知識や技術を持つ人材が必要です。
パソコンの調達はレンタルがおすすめ
Windows Autopilotは、新しくパソコンを調達した際に必要なキッティングの作業負担(作業時間)を削減できることが大きなメリットです。事前にクラウド上で設定を行っておけば、ユーザーは届いたパソコンを起動してIDやパスワードで認証するだけで、事前に登録した設定やプロファイルが自動的に適用され、すぐに業務に取り掛かれます。
テクノレントでは、法人向けにパソコンやタブレットのレンタルを行っています。取り扱うパソコンはいずれもOSがProエディションを搭載しているため、他の要件を満たしていればWindows Autopilotを利用可能です。
もちろん、当社はWindows Autopilotのキッティング作業にも対応していますのでお気軽にご相談ください。
パソコンレンタルは、短期から長期まで自由に利用期間を設定できます。短期レンタルは、イベントやセミナー、研修など一時的に多くのパソコンが必要になったときなどに便利です。また、長期レンタルはコストを平準化できるため、購入した場合のような初年度の過大な償却負担を軽減できます。故障時はすぐに代替機を発送いたしますので、利用できない期間を最小限に抑えられます。
パソコンのレンタルをお考えの方は、お気軽にご相談ください。