AI技術の進化により、高性能な次世代パソコン「AI PC」が複数のメーカーから次々と登場し、注目を集めています。
本記事ではAI PCの特徴や、ビジネスで利用するメリットなどを解説します。
AI PCとは
AI PCとは、CPUやGPUに加え、AI処理に特化したプロセッサ「NPU（Neural Processing Unit）」を搭載したパソコンのことで、「AIテクノロジー内蔵PC」とも呼ばれます。主な用途に、データ解析や画像認識などがあります。
通常、生成AIでの処理はクラウド上で行われ、生成された結果をPCで受け取って利用します。生成AIサービスはクラウドで提供されているものが多いため、高いスペックのPCではなくても処理ができるなどの利点があります。一方で、インターネットを経由してデータを一度外に出すことになるためセキュリティ上のリスクや通信遅延、CPUの負荷が大きくなるなどの課題がありました。
AI PCは、NPUを搭載することでローカル（インターネットを経由しない環境）でも高速なAI処理が可能になりました。クラウドを利用せずにAI処理ができるため、セキュリティ面でも安心できます。また、AI PCのAI処理はNPUが負担するため、CPUの稼働率を抑えることもできます。そのほかにも、「Webサイトの閲覧履歴などからユーザーの好みを学習する」「AIアプリケーションの利用が可能になる」などの特徴があります。従来のPCに比べ、よりパーソナライズされたＰＣといえるでしょう。
AI PCが生まれた背景
従来のPCでもローカルで簡単なAI処理ができるPCはありました。しかし、CPUやGPUに多大な負荷がかかるため、処理に時間がかかったり、PCの動作が重くなったりするなど、AI処理に最適化されていないものがほとんどでした。
また、生成AIなどを使用するときはデータをクラウド上にアップロードし、処理した生成結果をPCで受け取って利用していました。インターネットを介してやり取りするため、通信遅延や情報漏えいの懸念もあったのです。
そのような課題を背景に、ノートPCのような小さな筐体でもAI処理を高速化できるNPUが開発され、クラウドを利用せず、ローカルでAIが利用できるAI PCが生まれたのです。
AI PCのスペック
IntelとMicrosoftは2024年2月にAI PCの定義を発表しました。共同で定めたAI PCの定義では、以下の要件（共通事項）を満たすものをAI PCと呼んでいます。
- CPUとGPUに加えNPUを搭載している
- Copilot in Windowsに対応している
- Copilotキーを搭載している
CPUとGPUに加えNPUを搭載している
従来のPCに搭載されているプロセッサはCPUとGPUの2種類です。CPUは「Central Processing Unit」の略で、中央処理装置と訳されます。“PCの頭脳”とも表現され、主にデータの処理や演算を行うパーツです。GPUは「Graphics Processing Unit」の略で、グラフィック処理装置を意味します。3Dグラフィックスなどの画像描写に必要な計算処理を行う役割があります。
NPUは、AIに特化したプロセッサのため、CPUやGPUに比べてAIの推論をする処理に長けており、AI処理の高速化や電力効率の向上が期待できます。
Copilot in Windowsに対応している
「Copilot in Windows」とは、Microsoftが提供しているAIチャットアシスタント「Microsoft Copilot」の機能を利用できるサービスです。Windows 11に搭載されており、音声操作による翻訳や質問への応答、画像生成などさまざまな機能があります。Copilot in Windowsを利用することで業務効率を向上させることができます。
Copilotキーを搭載している
Copilotキーは、Windows PCのキーボードに追加されたキーです。Copilotキーを押せば、Copilot in Windowsを呼び出せるので、AIアシスタントを頻繁に利用する人に便利です。長押しすると音声認識が開始されます。
2024年5月に発表されたAI PCの新しい要件
2024年5月、Microsoftが「Copilot＋PC」を発表すると同時に、新しいAI PCの要件が発表されました。
- Microsoftが承認したCPUまたはSoC。40TOPS（1秒当たり40兆回）以上の推論処理を行えるNPUの搭載が必要
- 16GB以上のDDR5／LPDDR5規格メモリ
- 256GB以上のSSD／UFSストレージ
AI PCの定義は、最初の発表から3カ月後に新しい要件が発表されているため、今後も定義が変更される可能性があります。
AI PCのメリット
AI PCの主なメリットとして、次の3つが挙げられます。
- 処理性能の高速化
- セキュリティリスクを抑えられる
- 消費電力の低減
処理性能の高速化
AI PCは搭載されたNPUを利用してデータをAI処理するため、膨大な量のデータでも瞬時に分析することが可能です（NPUを使用して処理するかどうかはソフトウエア側で設定されます）。
セキュリティリスクを抑えられる
AI PCは、クラウドではなくPCに搭載されたNPUでローカル処理できるため、情報を外部に出さず、セキュリティリスクを抑えられます。
消費電力の低減
消費電力を大幅に低減できることもAI PCのメリットの一つです。従来のPCでは、デバイス上でAI処理を行うと負荷が大きいため時間がかかり、消費電力を大きく使っていました。一方、AI PCに搭載されているNPUはAIの推論処理を高速化するためのプロセッサであるため、消費電力を抑えてスムーズに処理することができます。
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